「そういうことしないで」
「すみません」
私が黙ると、「歩く?」と訊いた。
「見つからない?」
「他に社内恋愛中の奴と、外に呑みに行く人がいなければ大丈夫だと思いますけど」
「じゃあ、少しだけ」と、橋の方へと歩いて行った。
喧嘩腰で話さないようにって、自分に言い聞かせながら。
しばらく黙ってた。橋の真ん中ら辺まで行って、「千花さんは、なにが不満なんですか?」と広重は言った。
「不満?」
「うん。だから、谷さんとご飯に行ったんじゃないの?」
「なに言って……?」
「違うんですか?」と、言う声は本気に思えた。
「そんなわけないじゃない」
「じゃあ、なんで2人で食事に行ったんですか?しかもそれを隠してたのは理由があるからでしょ?」
「隠してたんじゃないよ。別にやましいことがないから言わなかっただけ」
「俺は言って欲しかったけど」
「それは、ごめん」と謝った。
「本当に何もないんですか?」
「何もないよ」と言い返すと、責める代わりに「この前、言ったこと覚えてる?」と広重は言った。



