それよりも。広重に抱きしめられる腕の温度が、夏の夜には暑くて。
暑すぎるほどで。
そればかり意識してしまって、息も身動きも上手く出来そうにない程、違うドキドキに縛られていた。
息を潜めていると、暗闇の向こうから、「で。めぐちゃんはどういう人がタイプなの?」と、声がしてぼんやりとした人影が目の前を横切っていく。
「タイプ?んー。一途な人かな?」
「一途な人?彼女がめぐちゃんだったら浮気しないでしょ?」
「あはははははー」と笑う、水谷さんと村上くんだった。
「なんで笑うの?俺、本気で言ってるのに」
「あ。ごめん。面白かったから」
こんな時間にこんなところを散歩してるってことは、2人は付き合っているということ?
そう思ったけど、すぐにそれは違うってわかった。
「めぐちゃんが彼女で、俺が彼氏だったら絶対、浮気しないのにな」
「そうなんだ。じゃあ、村上くんの彼女は幸せなんだね」
「いや。えっと、そうじゃなくてさ」
しどろもどろになると、村上くんは言葉が選べなかったのか、黙ってしまった。
だんだんと足音が遠のいて、声も聞こえなくなった。



