ロビーを抜けて、右に曲がる。橋の手前で会う約束だった。
呑み慣れないビールと焼酎を交互に呑んだせいか、足元がおぼつかなくて、走りながらも転んでしまいそうだった。
「……着いた」
息がかなりあがっていた。
右を見ても左を見ても、広重の姿は見あたらなかった。
もしかして、待ちくたびれて帰ってしまったのだろうか。
「……広重?」
シンと静まり返っていて、誰もいないみたい。
やっぱり、連絡すれば良かった。少し遅れるって、そのくらい出来たはずだ。
怒ったかな。約束守れない人だって。
薄暗い街頭だけが私を照らしているせいか、急に心細くなってきた。
明るいはずの月だって、雲に隠れたり顔をだしたり、不安定な色で照らすだけだ。
「広重?……広重?」
もう。なんで、いないの。
「……一幸」
やっぱり、返事はなくて。
すれ違って、会えない。ただ、それだけなのに、心はまたとっぷり哀しみに浸る。
もう、ダメだって言われてるみたい。
帰ろう。そう思った時だった。
足音が近づいたかと思うと、「騒がないで」と物陰に引っ張られた。



