強引な彼との社内恋愛事情*2


ロビーを抜けて、右に曲がる。橋の手前で会う約束だった。


呑み慣れないビールと焼酎を交互に呑んだせいか、足元がおぼつかなくて、走りながらも転んでしまいそうだった。


「……着いた」


息がかなりあがっていた。


右を見ても左を見ても、広重の姿は見あたらなかった。


もしかして、待ちくたびれて帰ってしまったのだろうか。


「……広重?」


シンと静まり返っていて、誰もいないみたい。


やっぱり、連絡すれば良かった。少し遅れるって、そのくらい出来たはずだ。


怒ったかな。約束守れない人だって。


薄暗い街頭だけが私を照らしているせいか、急に心細くなってきた。


明るいはずの月だって、雲に隠れたり顔をだしたり、不安定な色で照らすだけだ。


「広重?……広重?」


もう。なんで、いないの。


「……一幸」


やっぱり、返事はなくて。


すれ違って、会えない。ただ、それだけなのに、心はまたとっぷり哀しみに浸る。


もう、ダメだって言われてるみたい。


帰ろう。そう思った時だった。


足音が近づいたかと思うと、「騒がないで」と物陰に引っ張られた。