唇が鎖骨までおりると、広重の髪が肌に触れて、くすぐったさが増した。


「広重、待って」


そんな気分じゃないのに。だけど、キスをやめる気配はなかった。


目を閉じて、ギュッとソファの背もたれを掴んだ。


広重は、今、なにを感じとっているんだろう。


触れ合っているのに、心は遠く感じる。


唇はなにを感じとる為に、こうして人に触れるようになったんだろう。


広重が、私を組み敷いたまま、顔を近づけた。


ぼんやりと揺れてぼやけて見える。


「いつも千花さんのことばかり、考えてて悔しい」と、私の唇を塞いだ。


なにかを封じ込めるみたいだった。