強引な彼との社内恋愛事情*2


壁のスイッチを押すと、暗かった廊下に光が落ちる。


自分の家なのに、一歩踏み入れるのに躊躇ってしまう。


「お邪魔します」と先に靴を脱いだ広重の怒ってるような背中が嫌だった。


2人掛けのソファに先に広重が座ると、ネクタイを緩ませた。


いつもなら隣に座るのに、わざとテーブルを挟んで向かい合わせで座った。


「千花さん。本当なんなんですか?」


「え?」


「言いたいことがあれば、はっきり言ってください」


「言いたいことなんか、別に」


「じゃあ、こっちに来てよ」と私を見つめながら言う。


「来ないの?」


「行ける」と、彼の隣に座った。


「怒ってるでしょ?俺、なんかした?」


無自覚って、恐い。だけど、水谷さんに妬いてることなんか言いたくなかった。


「別に」


こんなんじゃ、話は平行線で終わってしまうのに。


「じゃあ、こっち見て」


「え?」


「なにもないなら、キスして」