「だって……」と、言って続かなかった。
つらつら頭に浮かんでくるのは、すごくマイナスな言葉ばかりで、広重をきっと不快にさせてしまう。
私の中で、終わらせたかった。
だから、今だけ、顔を見たくない。
「なんで怒ってるの?」
「怒ってない」
「なら、なんでメール、シカトすんの?」
「気づかなかっただけ」
「そんな嘘、通用すると思う?」
はぁ、と吐かれた溜め息は、呆れたと言わんばかりで、余計に心が狭くなる。
それなのに、言葉はでてこない。
言いたくなくなるから、黙ってしまう。
どうせ、わかんないって思っているのかもしれない。
広重にはわからないって思っているのかもしれない。
自分のことなのに、あやふやだ。
それなのに、広重は、黙ってる私を良く感じていないんじゃないかってことは、わかるんだ。
人のことなのに。変なの。
「とりあえず、家あげて」と、強引に腕をとるから、黙って後ろを歩いて行った。



