強引な彼との社内恋愛事情*2


先にタクシーを降りて、道路の反対側に渡ろうとすると、「ありがとうございました」と窓から水谷さんが叫んでいた。


なんのことだろう、と思って立ち止まる。


少し多めにだしたタクシー料金か、と気づいた。


慌ててお礼を言う様が可愛いし、酔っていてもお礼を言う彼女はいい子なんだと思う。


私はなんて醜いんだろう。ただただ、嫉妬してるだけで。


水谷さんのことでさえ、ちゃんと見ることが出来ないなんて。


鬼千花、と社内でつけられている私のあだ名は合っていると思った。


私のこと、よく知っているよ。感心しちゃう。


自動販売機の角を曲がったときだった。








「千花さん」と、広重の声がしたのは。