トイレからの帰り、水谷さんと廊下ですれ違った。
困った顔で、「トイレ、何処ですか?」と私に訊くものだから、ちょっと可笑しくて笑ってしまう。
「この先にあるよ」と、壁に堂々と描かれている矢印つきのトイレの案内表示を指差すと、「ああ。すみません」と慌てて謝る。
そういえば、と思った。
歓迎会と名目だから、うちの部の人しか来ていないのかと思っていたのに、総務の水谷さんだけがなんでいるのだろうと。
「金子さんとか、来なかったんだ?」
総務にいる私の同期の金子さんの名前を言った。
歓送迎会といった呑み会には必ず参加しているイメージがあったからだ。
「あ。来てないみたいですね」
「そう。じゃあ他の総務の子達は一次会で帰ったの?」
「いいえ。総務からは、私しか誘われてなかったみたいで」
「え?」
「って、さっき広重くんに言われました」
「ああ。広重に誘われたんだ」と言うと、「はい」と笑って、「ごめんなさい」とトイレに急ぐのか、小股で走って行った。



