「俺のこと、手放したくないんですね」


顔が熱くなってしまいそうだった。


「それは……」と、言い訳してしまいそうな唇を塞がれた。


静かに、だけどゆっくりと、私の口内を優しく触れる。秘密でも探るみたいに。


そっと離れる。私を見て、また笑う。


「好きとか言いながら、あっさりさよならって、本当ないですよ。そんなものかと、がっかりしました」


「だって、迷惑だって……」


「俺、千花さんが別れたくても、絶対別れなんて告げませんからね。絶対、好きにさせます」と、意地悪な顔をする。


「私は、広重じゃないもの。でもそれでも、私の中じゃ……」と、言って、口をつぐんだ。


こめかみにも優しくキスをして、「それから?」と訊く。