ぼそぼそとした話声が聞こえた。
道路の奥、暗闇の中に影が2つ見えた。
違う人か、と諦めたのだけれど、徐々に影が人の形を成していくにつれて、広重だってわかった。
だけど、隣にいるのは、女性だったから、私は声を呑み込んでしまった。
きょとんとして、私に気づいたのは、広重の隣にいる女性だった。
私より、たぶん年下っぽい。可愛い雰囲気の女の子。
その表情に反応して、「千花さん」と、広重が名前を呼んだ。
あ。
どうしよう。
身体が強張って、動けなくなる。
女性は、私たちの顔を見比べるようにすると、「すみません」と、先に頭を下げた。
「は?」
聞き返すより、広重の行動のほうが早かった。
彼女に向かって、なにか話しかけたりしたかと思うと、女性は私の横を通って、エントランスを抜けて行った。
すれ違い様に会釈をして。
「千花さん、どうしたの?」
広重の表情は、固かった。仏頂面で、冷たくそう言うから、今から言う言葉や気持ちは、きっと、広重には届かないんだろうって、予感させた。



