どのくらい待っただろう。現れる気配はなかった。
今日、残業だったのかもしれない。
それか、急な修正確認依頼とかで、会社に泊まりなのかもしれない。
そしたら、ここで、待っていても仕方ないかな。
エントランスの中にいても、ぐっと寒さが増した気がした。
帰ろう。そう思って、自動ドアを出た。
見上げた。広重の家の部屋には、なんの変化もなかった。
もう少し、待ちたいな。あと、5分。
まだ私の後ろ髪を引っ張るのは、やっぱり、今、言いたいという思いだけだった。
やっぱり、今、言いたい。
顔をあげる。ひんやりとした冷たさが肌に触れた。
小さな雪が、降ってきたことに気がついた。
街頭の灯りの下、ゆらゆらと踊っているみたい。



