強引な彼との社内恋愛事情*2


歌の途中にもかかわらず、それさえもやっぱりどうでもいいのか、谷くんは乾杯の声をかける。


そこでようやく広重が私に気付いたのか、目が合った。


満面の笑みを私に惜しみもなく向けるけど、泣きたくなった。


ビールを口に運んで、目を逸らす。やっぱり、ビールなんかおいしくない。


「遠山さんの歌、聴いてみたいです」と、谷くんは私にデンモクを渡してきた。


「歌、嫌いなの」


「嘘。じゃあ、二次会来ない方が良かったじゃないですか」


「そうかもね」と意地悪っぽく笑って見せた。


適当に頼んだカラオケの料理が運ばれてきた。


居酒屋みたいだな、と思って眺めていた。


だけど、意識はどうしても、今、マイクを握っている広重と水谷さんに向いてしまう。


デュエットというわけじゃないけど、広重がこの前教えてくれた、好きなんですと言っていた男性ヴォーカリストの歌を一緒に口ずさんでいた。


私は、まだサビを鼻唄程度にしかわからないのに、水谷さんは全部歌えるみたいだ。


どうでもいいことのようで、とても重要なことにも思えて、気持ちがまた沈んでいった。