谷くん、わかってないんだ。私がどんなに嫌われてるかって。
「あ。お疲れ様です」と気づいた数人が、声をかけてくれたけど、なんとなく素っ気なく感じる。
まあ、いい。今だけ我慢すればいいんだ。
「お疲れ」と手前のソファに腰をかけた。
ふっと奥を見ると、私が来たことに気付いていない広重が、水谷さんと楽しそうに肩を並べて話していた。
「遠山さんも思ってるんでしょ?」
谷くんが言った。
「なに?思ってるって?」
「あの2人、付き合ってるのかなーって?」
見つめる先が一緒だった。
「あの2人?」
しらを切ってみたけど、谷くんはどうでもいいみたいで、「仲良いですよね」と、呟いた。
「そうね」
「一次会も、あんな感じで」
「……へぇ」と素っ気なく言った。
「遠山さんもそう思っているのかと思いました。あ、なに呑みます?」
「あ。どうしようかな」
言いながら、胸の上になにかが覆いかぶさったみたいに重くなった。
そう見えるのは、私だけじゃないってことがわかってしまったからだ。



