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それから、数日後、星野さんと私の歓送迎会が会社の近くの居酒屋で行われた。
正直、行きたくはなかったけど、さすがに、断る理由がなかった。
人と打ち解けて悪いことは、なにひとつないのだから。そんなこと、わかってる。
乾杯の音頭をとって、グラスを傾ける。
苦手なビールを、一杯だけと思って、喉に流し込んだ。
というのに、気を遣ってか、隣の席の男の子が私の空いたグラスにビールを注いでくれた。
早く終わらないかな、と、楽しそうな笑い声が飛ぶ中、意識は、すでに先ばかり見ている。
どこに行っても、そういう雰囲気って楽しめないんだな、と思う。求めてる気はするのに。
「お疲れ様です」と、星野さんの声がはずんだ。
その先、開けられたお座敷の障子に立っていたのは、田原さんだった。



