広重に、ハンドモデルを引き受けたことを伝えたら、「水谷っち、そんなことしてたんだ」と、ちょっと驚きながら、感心していた。


「でも、そういうの似合いそうだよね」


と、言うと、


「そうですね。器用だし」


と、誉めた。


電話を切ってから、私は、そういうこと学びたいとか思わないな、と考えた。


頭に浮かんだことさえない。


入社したての頃とかは、色々、資格とらされたこともあったっけ、と、棚に眠ってあるような、テキストを取り出してみた。


がむしゃらだったな。


今の私はどうだろう。


あの頃は、仕事しかなかったし。


それさえ頑張れば良かったんだ。


今は、仕事と広重がいる。


どっちが大切か、なんて比べる気もないけど。


昔みたいな情熱、ちょっと失いかけてるような気がした。


私、らしくないかも。


そんなことぼんやり思いながら、タバコに火をつけた。