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「歩くの速いですよね」
声をかけられたのは、喫煙室に向かっているときだった。横を見ると谷くんがいた。
「お疲れ様です」
「お疲れ」
「忙しいから急かしたくなるのか、急かしてるから忙しくなるのか」
独り言みたいに言った。
「何が言いたいの」と社交辞令のように訊く。
「遠山さん見てるとあれ思い出すんですよ。卵が先か鶏が先かってやつ。タバコ行くんですか?」と、喫煙所の前で訊くものだから、仕方なく連れだって入った。
煙草に火をつけて、煙をくゆらす。
「遠山さんも行くんですか?」と、谷くんは言った。
ふと広重がかっこいいと言っていたことを思い出して、言われてみれば、バランスのとれた顔なのかな、と、ボーッと眺めて見ていたものだから、言葉に詰まってしまった。



