「まあ、まだ結婚のことも、ごく一部しか知らないから、遠山のとこで止めておけ。急に言われるよりいいかなって思って。お前、最近頑張ってるから、拍子抜けしたら困ると思って言ったまでだ」
「え……だって」
「大丈夫だよ。お前なら」と、笑うけど。
異動、か。
まさか、このタイミングで言われるとは思っていなかったけど。
「たぶん、年明けとかになるんじゃねーかな」と、顎を撫でた。
「そうですか」
こんなときに、広重の顔が浮かんだ。
一緒に仕事が出来るのも、今のプロジェクトが最後になるのか。
「やっぱ、嫌か?」
「い、いいえ」
かぶりを振った。
「あの星野の後任、任せられるんだから、プレッシャーだな」
「まあ、仕事が出来ますし人望もある方ですからね。って、決まる前から、プレッシャーかけないで下さいよ」
「いや。たまには、お前の困ってる顔とか見てみたいと思ってさ」
「なんですか、それ?」
「なんでも出来るような顔、しなくていいから。困ったらいつでも言えよ」
「え……?」
「そういうとこ、可愛くないとか言われるぞ」



