今のプロジェクトは、12月で終わり。
デスクに置いてある卓上カレンダーをめくった。
早いな。今年もあと数ヶ月で終わりか。
なんて、思っていたら、「遠山」と呼ばれた。
顔を上げると、田原さんがいた。
「あ。お疲れ様です」
「お疲れさん」
「お前、今日暇か?」と、ちょっと声をひそめた。
「今日?」
「飯、食いに行こうぜ」
「あー。いいですけど」
「決まりな。あと連絡するわ」と、言って、ボードに外出の予定を書き込んでいくと、フロアを後にした。
あれ。もしかして、2人きりでご飯ってことかな。
一瞬すぎて、訊けなかった。
だけど、田原さんが仕事のあとに、私をご飯に誘うなんて珍しい。
なんとなく仕事のことで、なにかあるのかも、と思った。
広重から、チラリと訊いていたのは、奥さんとは順調だってことくらいだし。それにプライベートなことを語らうほどの仲じゃないし。
やっぱり、それしか思い浮かばない。
悪い話じゃないといいな、と、またパソコンに向かった。