「ちょっと広重くん」と、谷くんが言ってた。


時計の針は、すでに22時を過ぎていた。社内のフロアには、まだ数人残っている。


「2389の修正確認依頼きたんだけどさ、1回しか発生してないんだよね?」


「2389」と呟いて、キーボードを叩く。


「ああ。これか。これ、発生率1000分の1ですよ」


「マジで?広重くん変わってよー」


「俺、今、負荷試験の途中ですから」


「これ、広重があげたやつだよね?ていうか、広重って、なんか発生しにくいやつばっかあげるよねー。ていうことは、これでお盆休みがなかったら、広重のせいってことになるよね」


「なりませんよ。谷さんだって、この前すっごい面倒くさい手順のあげてたじゃないですか。あれ、確認するの本当に大変でしたからね。鈴元さんと一緒にやりましたけど大分ご乱心でしたよ」


そんな冗談を言い合ってる2人の後ろに立って、ごほんと咳払いをした。