誰?と、シラをきろうかと思ったけど、逆に意識しているみたいで、出来なかった。
「久しぶり」
「本当、久しぶりね」
「千花、すごい日焼け対策」
「だって焼きたくないもの」
「相変わらず、色白だな」
そう言って笑う彼、准一(ジュンイチ)と付き合っていた頃のことを思い出したくないのに、頭の中を思い出が駆け巡ってくる。
私と内緒で社内恋愛をした末、総務の女の子と浮気。結局、私を捨てて、その子を選んだんだ。
そして気が付けば、2人は退職。社内では、私が准一をたぶらかした、なんて話になってた。
残された私といえば、ひとりで生きていかなきゃいけないという覚悟、とか。
年下でふざけた男とは付き合いたくない、とか。
社内恋愛なんか二度とするもんかってこと、とか。
そんな感情だけ残された。
別れ方の下手な男だった。
もう一生会いたくないとさえ思っていたのに。
こんなところで会うなんて、思わなかった。
だけど、これ以上話すことなんかない。
向こうへ戻ろう。そう決めたら、スマホが鳴動した。広重だった。



