振り返った瞬間、血の気がひいた。心臓の音はよく響いていて、恐怖にも似た嫌な感覚を覚えた。 「やっぱり、千花だ」 駆け寄ってくる。Tシャツに短パンにビーチサンダルの男。 嫌だ。顔、ちっとも変わってない。髪の色が落ち着いたくらいで。 だけど、偶然見かけただけで話しかけてくるだろうか。 釈然としない。 ああ。私はたぶん、この人を赦していないのかもしれない。 別れた人、だというのに。