「…悪かった。」
優しい指先が離れていく。
なんとなく切ない気がした。
こんな気持ちになるなんて、私はおかしくなってしまったのだろうか。
先輩以外の人に触れていて欲しいだなんて。
「あ…」
離れていく大きな手を両手で握りしめる。
今度は藤崎が驚いた表情をする。
握りしめたはいいものの、この後何をしていいのか分からない。
近くにはお酒でいい感じに出来上がった人がうろちょろしている。
とても雰囲気のあるところではない。
「なぁ……俺、何か…できることあるのか…」
しどろもどろになり、少しだけ頬が赤くなっていく。
空いた方の手で自分の髪の毛をクシャっとする藤崎が少しだけかわいく見えた。
「あ、いや…ごめん、私もよく…分からなくて…どうしよ。」
ハッとしたように我に返った。
何やってんだ私。もっと考えて行動しろ。
「…何だよ…期待させんな。」
「あ…ははは……ごめん。」
「席、戻るぞ。」
「…ん。」
パッと両手を離して、俯いた。
私はいったい藤崎に何を求めようとしてたんだろう。
席に戻るとデロデロに酔った緩奈と、それを一生懸命介抱してくれる中村君がいた。
緩奈と同じくらい飲んでいるはずの彼は顔色一つ変わってない。
中村君、本当にお酒強いな。
「あ、ごめんね中村君。緩奈酔うとめっちゃダル絡みだから…私、変わるよ?」
「あ、いや。大丈夫。…こんなとこ見れるのレアだし。」
「レア?酔ってる緩奈?あれ、もしかして中村君。」
「こいつのこと気になるって言ったから連れてきた。」
隣にいる藤崎が緩奈のことを指さす。
なるほど、そういうわけか。
全然偶然じゃないじゃん。なかなかやるな藤崎。
じゃあ、今の緩奈の様子は中村君にとって嬉しいことなのかな…
新たな一面ってやつ?
