課長と私


「一緒に飲んでも大丈夫ですか?」

「私は大丈夫!…というか、敬語やめない?私は今日ストレス発散日だから飲むよ!中村君お酒強い方?」

「そこそこいける口だと思うけど、藤崎も強いよね。」

「俺?…まぁそこそこ。」

「よし、決まり!お店は歩きながら探そう!」


緩奈が私の手を引っ張って誘導する。

お店はすぐ見つかった。
激安と書いてある看板に惹かれ、駅近くの居酒屋に入る。
混んでいる様子ではないが、そこそこの活気が見られた。

他のメンバーがお酒を頼んでいる中、私はもちろんウーロン茶。
以前の失敗が思い出される。


「えー!?楓飲まないの??こういう日くらい良いじゃない。」

「…控えています。」

「飲めばいいのにー。ね、藤崎?」


話をふられた藤崎が自分の飲んでいたビールを吹きだしそうになっていた。
奴も覚えているらしい。

隣の中村君は何がなんだかという顔。

いや、知らなくていい。
そして思い出したくない。その話の先には先輩がいるから。


「緩奈やめてってば。」

「はいはい…ま、今日は楽しく飲みましょうか!かんぱーい!」

「乾杯。」


最初は盛り上がるのか分からなかったこのメンバーの飲み会も、時間とともに話がはずんで
緩奈は適度に酔いながら中村君に絡んでいた。

お店に来てから1時間くらいが経って、私はトイレに行った。
鏡を見ると、目の腫れは朝よりはいくらかマシになっていた。

トイレを出てきたところでちょうど藤崎に出くわす。
思ったより距離が近くて驚いた。


「おぉ…びっくりした。」


「…あのさ。」


なんとなく言いづらそうに目線を外す。


「ん?どうしたの?」

「何か…あったのか……ってか特に目。…泣いたのか?」

「えっ…あぁ。ちょっといろいろあった…かな。」


藤崎はどこまで知っているんだっけ。
彼氏がいるっていうところまでだったか…

駅であった時とは違う態度を見ると、本当に心配してくれているらしい。


「いろいろって?」

「いろいろはいろいろだよ。そこはあんまり聞かないでよ…藤崎には関係ないでしょ。」

「…そんなに目腫らすまで泣いといて、それは無いだろ。」


私の瞼に藤崎の熱い指が触れる。
触れた瞬間、肩がビクッと震えた。

嫌なわけじゃなかった。

ただ、先輩以外の男の人にこんなことされるのは慣れていない。