私しかいないこの空間で、静かに会社へ行く準備をする。
会社に行けば、嫌でも目にすることになる彼の姿が思い浮かぶ。
それだけでまた泣きそうになる。
こんなに苦しい思いをするのなら、声に出して言うべきじゃなかったのに。
でも、心の奥底に潜むその感情を私は隠し通すことが出来ない。
「泣くな。頑張って…笑って…。」
一言だけ呟いて、いつものように電車に乗る。
いつもの風景。いつもの時間に会社へ着く。
どうしてこんなに足取りが重いのだろう。
「あー!ちょっと楓!?昨日何で急に電話切ったのー?緩奈様がこれからの楓の方針を……」
「あ…ごめん緩奈、あのね」
「楓、こっち来て。」
部署に着くなりなんなり緩奈が私の手をとって化粧室に連れていく。
「こんな目腫らして…何かあったの?」
私の瞼を優しく触る緩奈。
本当に心配してくれているようで、私のお姉さんみたいだ。
「へへ…喧嘩を……してしまってですね…。」
「喧嘩?…何で?」
「緩奈と、話してたでしょ?私と彼は釣り合わないんじゃないかなぁ…って。」
「うん。」
「あれ…聞かれちゃって、ってやんわり前も本人に言ったんだけど……なんか、嫌だったみたいで…」
「うん。嫌でしょふつう。」
あれ、緩奈。
そこは私の味方をしてくれるんじゃないんだ。
帰ってきた言葉に胸がチクッとした。
