課長と私


「……ごめん。寝る。」


のしかかっていた彼が目の前から消えて、広い天井が見える。
切ない気持ちが一気に広がっていく。

こんなに近くにいるのに、私の一言でこんなにも遠くなってしまった。
ベッドに戻った先輩からは静かな寝息がかすかに聞こえる。

残された私は今度こそ先輩を起こさないように声を押し殺して泣いた。


「…っ!」


噛みしめすぎて唇から血が出そうだ。
どうしていいか分からず、リビングのソファで1夜を明かすことにした。

苦しい。
胸に何か詰まっているみたいなそんな感じ。
散々自分で口にしていた言葉が、自分の首を絞めている。

ひたすら涙を流して目を閉じる。
目を閉じたら、今のことは無かったことになるんじゃないか、彼との仲も元に戻るんじゃないか。

思っていても、言葉にしちゃダメだ。
わかっていたはずなのに。

眠れないと思っていたのに、気づくと眠りについていた。
パッと体を起こすとそこにいると思っていた先輩の姿が無かった。

周りをゆっくりと見回しても気配がしない。
もう部屋にはいないのかも知れない。

机の上に目をやると、不慣れにもスクランブルエッグが置いてあった。



「そう…だよね。…私がいなくても……出来る、よね。」


考えれば当たり前のことだ。
私と付き合う前、彼女がいてもいなくても、食事ぐらい自分でなんとかしていたのだろう。
洗濯だって、洗物だって、掃除だって。

苦手なだけで、私が居なくても先輩はできていたんだ。