先輩と一緒にいるのは楽しい。
先輩と過ごせるのは幸せ。
もしも先輩と、本当に一緒になれるのなら…
きっと私の中で、最上級の幸せなのだろう。
でも、踏み切れない私がいる。
素直に、自分の気持ちに正直になれない私がいるのだ。
「楓の気持ち、分からなくないよ。私だって周りの目が気になるっていうのもある。」
「…うん。」
「でも、彼氏さんの言ってることもわかる。…楓の気持ち、聞きたいっていうのもね。」
「……。」
「ま、結婚してない私が言うことじゃないけどねぇ」
「うん、本当それ…。」
「こら!あんたの相談のってるのに…!」
「へへへ…やっぱり思っちゃうんだよね……先輩には、私じゃない誰かが似合うんだろうな…って。」
ポツンとつぶやいた私の声と同時に扉がゆっくりと開く。
「へ…」
「………。」
寝てると思った、彼が複雑そうな顔をしてこっちを見ている。
右耳にあてていた携帯電話がスルッと手から落ちていく。
「あ…ごめんなさい、うるさかったですか?」
「…楓ちゃん…こっち来て…」
「ぇ…先輩…あの…っ…!」
強引に掴まれた左腕から小さな痛みを感じる。
引っ張る力が強い。
いつもの和やかな雰囲気とは真逆の彼に少しだけ怖いと感じてしまった。
