その日の夜、先輩の仕事終わり、スーツのまま私の家まで迎えに来てくれた。
「ごめんなさい、わざわざ…大げさすぎましたよね…」
「何で?全然いいよ。…ご飯、いける?」
「…はい。」
家を出て、すっかり慣れた助手席に乗った。
「急な連絡、すいません。忙しかったですよね?」
「んー…大丈夫。俺もしようと思ってたし。」
「本当ですか…?」
「うん。…電話くれたおかげで安心した。」
「受からないと思ってました?」
「違うよ。…受かると思ってたから、確認したくて。」
「ほ、本当…ですか」
それだけであの通知メールより100倍嬉しい。
レストランの駐車場に車を止める。
見た感じ、少し高そうなところだけど大丈夫だろうか…
自分の財布の中身を必死に思い出すが、千円札がちらほら入っている記憶しかなかった。
勉強ばかりでバイトを頑張れなかった自分を責めた。
「楓ちゃん。行こう。」
「あ、はい…」
お店に入る前からすでに緊張している。
店内に入ると、私みたいな平凡な大学生が気楽に来れるような雰囲気のお店ではないことが重々分かった。
こんな格好で良かったのか…
一応シックな色のワンピースだが、場違いな感じがして冷汗が出てくる。
周りのお姉さま方の目線も少し気になる。
「あのっ…先輩…」
「ん?」
「私…あんまり手持ちが…」
他の人に聞かれるのも恥ずかしくて、席に着いてから小声で話す。
先輩は「あぁ。」と思いついたようにして、うっすらと笑った。
「これでも俺、社会人なんだけどな。」
「でも…すぐに返せないかも知れないし…」
「返さなくていいよ。…こういう時くらいかっこつけさせてくれる…?」
「そんな…あの……すいません。」
こんなことなら就活前にバイトを掛け持ちしておくんだった…
むずがゆい気持ちでいっぱいだ。
