改めて会場案内の紙を見ると、確かに会場の奥の方に彼の会社の名前があった。
「先輩の会社……行ってみようかな…」
私の能力が足りているかと言えば謎だが、先輩の会社という響きだけで足が動いた。
会場の奥につくと、人だかりができていた。
どうやら今回の説明会の人気株だったらしい。
「おお…どうしよう。」
設置されたホワイトボードさえも見えない私に、会社の営業の方が声をかけてくれた。
「あのー、もしかして、須藤さんですか?」
「えっ」
「あ、違います?すいません、俺の同僚が言っていた人と似ていたもので…」
「あ…柳瀬…さんですか?」
「そうですそうです!じゃあ、あなたが須藤さんなんですね。俺、山村って言います。よろしく!」
人懐っこいような笑顔を向け、右手を差し出す。
第一印象は柴犬みたい。すごい可愛い。
先輩の同僚ってことは、あんまり年も変わらないんだろうか。
「良かったら…俺が会社説明しようか?ここ、混んでるし待ってる時間がもったいないしさ。」
「いいんですか?…じゃあ、お願いします。」
この後、私は山村さんに説明を受け、先輩がどういう会社に勤めているのかを聞いた。
彼が勤めているという話を抜きにしても待遇が良さそうな会社だった。やりがいもありそう。
私の今の実力で突破できるかは分からなかったけど、一次試験を受けることを決めた。
ふわふわとした進路に道が開けた気がした。
第一に自分の意志でこの会社で働きたいと思った。
大学に戻った私は、今までの学生生活の中で1番集中して授業に取り組んだ。
先輩との出会いの場であるサークル活動も後回しになった。
先輩の会社はやはり倍率が高かったようで、同じ大学からも知ってる顔が面接を受けていた。
それでもなんとか最終面接まで進み、面接官に少しでも私のことを印象付けるように努力した。
私にできるのはここまでで、あとは神様仏様頼み。
「内定がもらえますように…」
近くの神社に柄にもなくお参りにも言った。
効果があるかはさておきだ。
