「冷蔵庫の中、なんでも使っていいよ。」
「…え?」
「何買っていいか分からないし、あんまり食材買わないんだけど…」
「ん…?」
遠まわしに料理を作ってほしいと…言われてるのかな?
え、もしかして私に家政婦をしろと…?
彼女じゃ…ないってこと…?
完全に都合のいい女枠…
脳内会議が大変なことになっている。
目の前には優しそうな表情の先輩。
こんな間近で長時間先輩の顔を見たのは初めてかもしれない。
いつ見てもイケメンだなぁ…
「…あの…」
「クローゼットも空いてるし…あと…」
待って待って待って。
本当に意味が分からない!
徐々に近づいてくる綺麗な顔に戸惑う。
ギシっというソファの沈む音と一緒に唇が重なる。
私の視界には、いつの間にか先輩の後ろにあった壁が見えていた。
「……っ!」
「あと、何か説明してないっけ…?」
「ぁ…その……え?」
こ…この人、1番大事なこと伝えてないよね!?
つまり、今までの言葉は、先輩なりの告白…だったわけで。
冷蔵庫の中身を使って料理をしてもいいし、クローゼットに私の服を持ってきてもいいと…
「…楓ちゃん?」
「こ…これから…よ…ろしくお願いします…?」
説明不十分すぎる。
でも、嬉しい。たぶん、そういうことだ。私の中の第六感がそう言ってる。
まだ現実なのか夢なのか分かっていない私を引き寄せて長い腕の中に収める。
微かに聞こえる先輩の心臓のおとが不思議と私を落ち着かせた。
「…先輩のにおいがする…。」
「ん。俺だからね。」
少し笑って、ゆっくりと私を離した。
ようやくしっかりと先輩の顔を見れた気がする。
「あのっ」
「ん?」
「も…1回……」
「…いいよ。」
真っ赤な顔で震えながらも先輩に最初のお願いをした。
