「あのねぇ…楓は自分が思うより美人だし、ちゃんとしてるし、それとなにより…あっちが楓を選んだわけで、今も付き合ってるんだから大丈夫。それ以上の答えある?」
「うぅ…緩奈姉さん…」
マイナス思考の私に緩奈は太陽みたいにいつも心強い言葉を投げかけてくれる。
我ながら良い友人を持ったなぁと思う。
「お、そろそろ課長出勤してきちゃうよ?」
「え、もうそんな時間?まだ何にも支度してないや…」
いそいそとパソコンを立ち上げる。
すぐに女子社員の黄色の歓声ならぬ熱~い視線が入口に注がれる。
私はというと、黙々と画面に向かってパスワードを打ち込んでいる。
「課長も罪よね、仕事もできて、性格も私の知るうちは問題ないし、イケメンだし…。」
緩奈もなんだかんだ言って課長のことを見ているんだ。
ほかの女子社員とはちょっと視点が違うのだろうけど。
「おはようございます課長。」
「おはよう。」
「課長…昨日の件なのですが…」
「ちょっと待って。…皆おはよう。」
課長は話しかけてきた社員を一旦止めて部屋にいるみんなに挨拶をする。
そんなところも人気の1つだ。
自分が課長だからと、お高くとまらない。
ちらっと声のする方を見ると、課長もこちらを見ていた。
たった一瞬だったけど。
「ずるい……」
「んー?楓なんか言った?」
「ううん、何でもない。」
この感じを何て言えばいいんだろう。
そうだ、「あざとい」だ。
私と目が合ったときうっすらと笑うのは反則だ。
そう、課長と私は恋人だ。
同じ会社の、同じ部署。
もっと細かく言えば、先輩とは大学の知り合いで同じサークルだった。
私の友人に連れられて行った先に彼がいた。
