課長と私


「…おやすみ、楓。」

「……ん。」


さっきとは反対に、私がうとうとしてきたところを見て微笑む。
先輩の声が遠くに聞こえ、私は眠りの世界に落ちていった。


「…プロポーズしたら、一緒に暮らしてくれるのかな…楓ちゃん。」


優しく頬をなでる彼の声はすでに聞こえていない。
だけど、いつも1人で眠るときよりずっと深くて気持ちの良い眠りになった。


翌朝目覚めた私の前には、ずっと壁にもたれかかっていてくれた彼の姿。
私が眠った後、目が冴えたと言っていた彼もどうやら眠れたらしい。

壁にかかっている時計を見ると、出勤時間までに少しだけ時間がある。
彼を起こさないように、毛布から出た。

冷蔵庫の中身はいつもより豊富で、なんとか料理ができそうだ。


「何か…新婚さんみたい…へへ」


早起きして、旦那さんのためにご飯を作る。
絵にかいたような理想像だ。

料理も出来て、まだ眠っている先輩を起こしに向かう。

これもなんだか新婚さんみたい。


「先輩っ…起きてくださーい。」

「……。」

「朝ごはん出来ましたよ~…」

「…ん」

「おはようございます」

「…お…はよ。」


ぐっとのびをしてから首元をさすっている。
壁に寄りかかったまま寝てしまったからか寝違えたようだ。


「先輩、遅刻しちゃいますよ…」

「顔……洗ってくる。」


朝は低血圧で、私にでさえ薄い対応。
もう慣れっこだ。


「眠れた?」


洗面所から帰って来た先輩がフェイスタオルを手に聞いてくる。
毛先に水滴が少しだけついている。