課長と私


さすがに通勤ラッシュの電車は大変だ。

やっと座れたと思ったら次の駅が降りる駅だった。
こんなことを1年以上繰り返している。

朝の通勤ラッシュのことを彼に言うと「俺の車で一緒に行けばいいじゃん」の一点張り。

言ってもらえる事は嬉しいが、そんなことできる訳ない。
同じ車から一緒に通勤なんてしたら彼との関係が会社の人に一発でばれてしまう。


「おはよー緩奈…。」

「楓ー。また電車でもみくちゃだね…」


ごちゃごちゃになった私の髪を丁寧に直してくれる緩奈。

ちなみに緩奈はこの会社に入ってからの仲。
綺麗なストレートの黒髪、大きなパッチリ二重の目。

仕事はテキパキとこなす。会社に求められる人材だと私でも思う。


「昨日も彼氏ん家ー??

「え!?あ、一応…」

「あんたのところ、もう半同棲状態でしょー?」


同棲という言葉にどきりとする。
間違ってはいない気がする。


「そうだけど…。ほら、あっちも仕事あるし、あとは…そのー」

「またそれー?自分と彼は釣り合わない~ってやつ。」


彼女には彼の名前以外は大体相談している。
皆の憧れである彼とは釣り合わない、と何度か相談しているが、緩奈からするとぜいたくな悩みという言葉で片づけられてしまう。

私はそのことについて、長い間悩んでいる。