課長と私


「嫌だな、コレ……頭…痛いなぁ…」


頭の中に何度も繰り返されるこの記憶は、いつ消えるんだろう。
少なくとも今日明日で消えるものではない。
あの時の記憶だけ、すっぽりと無くしてしまいたい。

トイレに来てから30分ほど経った。
吐き気が全く収まらないためここから出られない。

まるで2日酔いだ。
いや、2日酔いの方がまだマシかもしれない。

嫌な思い出が鮮明に流れ続けている。


しばらくすると、コンコンとノック音が聞こえた。
ぐっすりと眠っていたはずの彼を起こしてしまったようだ。


「楓ちゃん……大丈夫?」


ゆっくりとドアが開く。


「あ……すいません起こしちゃって…」

「違うでしょ…起こしてって、言ったのに。」

「……そんなこと出来ないですよ。」


困ったように笑う私に、くしゃっと自分の髪を触る彼。


「眠れないの…?」


しゃがみこんで、同じ目線まで下がってくれる先輩。
相変わらず頭痛は残っているが、先輩の姿を見るとなんとなく吐き気は収まって来た。


「クスリ…飲んできますね。とりあえず頭痛薬を…」

「…うん。」

「先輩は、早くベッドに戻って寝てください!」


グイグイと背中を押す。
ここまで心配してくれて、すごい嬉しいけど…なんだか申し訳ないな…

私は頭痛薬を飲んだ後、ベッドに戻った。

強引にベッドに戻ってもらったはずの先輩はボーっとしながらも私を待っている。
さっきの事で目が覚めてしまったみたいだ。


「楓ちゃんのせいで目が冴えた。」

「えっ…私のせいなんですかー…」

「嘘だよ。…ほら、早くおいで。眠れないでしょ?」

「うっ…すいません…失礼します…」


壁に体を預けてもぐりこんだ私に毛布を掛けてくれた。

先輩の心臓の音が聞こえる。
ほっとして、私の方が先に眠れそう。

背中をポンポンとさすってくれる。子供をあやすような風で。