その言葉に感化され、もう一度彼の唇に触れる抱きのキスをした。
もう自分からは本当にしない…と、思う…
先程より満足げな彼の表情。
「俺、いつもそんな短いのしかしてなかったっけ?」
「か…勘弁してください…。」
先輩のSっ気が本領発揮しないうちに洗面所へ向かう。
顔を洗って、ルームウェアに着替える。
鏡で見た顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
しまった。こんな顔で先輩にキスしてただなんて…
化粧崩れを気にする暇も無かった…か。
今だからこそ少し余裕があるけど、ちょっと前まではそんな事考えられなかった。
私が洗面所から帰ってくると、先輩はソファからベッドに移動していた。
うとうとしているものの、私を待っているらしくギリギリ起きている状態。
「先輩…眠いなら、寝ても良いんですよ…。」
「…楓ちゃんが眠れないと困るでしょ。」
「…それで待っててくれたんですか?」
「…ん。」
布団をめくって、そこにくるように誘う。
小さな優しさが胸をきゅうっと締め付けて、私は急いでその隙間に飛び込んだ。
すぐに長い腕が私を包む。
「楓ちゃん…怖くなったら起こして…絶対。」
「そんな…ダメです…先輩は明日仕事が…」
「気を使わなくていいから、ね。……おやすみ。」
「…おやすみなさい。」
間もなく規則正しい呼吸の音が耳に届く。
疲れているのは当たり前だ。
勤務して、社長の接待もして、そこから急いで私のところに来てくれて。
顔を上げると、そこには先輩がいるのに、目を閉じた彼を見ていると一人になった気がして
数時間前のことが鮮明に頭をよぎる。
冷たくてじっとりとした男の人の目。
先輩とは似ても似つかない手つきでベタベタ触れてくる大きな手。
何度も何度も振りほどこうとしたのに振り解けなかった自分の無力さ。
気持ち悪い…
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…
「ぅっ……」
急に吐き気がしてベッドから出る。
トイレに着くも、ぐるぐると吐き気だけが残って治らない。
