足早にアパートを出て、先輩の車に乗る。
車の中では、いつもよりずっと静かな感じだったが
不思議とそれが私を安心へと誘っていった。
「はぁ……疲れた。」
部屋につくと、早々にソファにダイブする先輩。
普段やらないことをやったせいか、先輩も疲れている風に見えた。
「あの…先輩。」
「ん?」
「えっと…まだお礼を言ってなかったから……。」
「いいよ、別に。」
「…勝手に、家に帰ってすみませんでした。……それと、助けてくれて、本当にありがとうございました。」
ソファの近くまで行き、深々と頭を下げる。
今日のことは本当に感謝してもしきれないだろう。
「明日、1日休む?……1日じゃ短いか…数日くらい、休みもらおうか…」
「そう、ですね……でも…1人になるのが今は…ちょっと怖くて…」
社会人になってから、こんなに長い休みをもらうのは初めてかもしれない。
おかげで有給が取れそうだけど。
「俺も休んじゃダメ?」
「それはダメです。」
「ケチ。」
さっきまで、まともに喋れなかった私が今こうやって少しずつ笑顔を取り戻しつつあるのは絶対先輩のおかげ。
「先輩…」
「ん?」
少し眠そうな彼の顔に自分の顔を近づける。
その薄い唇に私の唇を触れさせる。
一瞬驚いたような顔をしてすぐに柔らかい笑顔に変わる。
「今日は…積極的だね楓ちゃん」
「今日、だけです……もう…しません。」
ふいに笑顔になられると逆にドキッとしてしまう。
動揺が声色に伝わっていく。
「…俺頑張ったのに。」
「それは……ありがとうございます。」
「ん……いつでも、助ける…」
