「ぇ……あ、ごめんなさい。私…帰りますね」
サアッと冷たい空気が体を通り、なんとなくこの場にいてはいけない気がして
手にしていた鍵を手早く出し、鍵をあけようとする。
まだ後ろにいると思われる真鍋さんの視線がじっとりとして気持ち悪い。
こんなときに限ってうまく鍵が開かない。
手が小刻みに震える。
なんで…
なんでなんで…
手が言うことを聞かない。
震える手をもう一つの手で押さえる。
数秒しか経っていないのに長い時間をかけて鍵を開けた感覚。
やっと開いたドアに急いで体をねじ込ませる。
そのままドアを勢いよく閉める。
鈍い感覚。
しっかりとドアが閉まっていない感じがする。
「な…んで…」
そこで初めて自分が涙を流しているのが分かった。
勢いよく閉めたはずのドアは真鍋さんの大きな足にせき止められ、その隙間に手を入れてどんどんと開かれていく。
男の人の力に勝てる訳がなく、手汗で滑ったドアノブが簡単に真鍋さんを部屋に招き入れる形になってしまった。
「……真鍋さん……?」
「どうして、泣いているんだ。君は俺のものだろ?あんな男にたぶらかされて、まったく君って子は…」
「何言って……」
「あんな男の話なんて聞きたくないんだ。俺のことだけ見てればいいんだから。」
靴を脱ぐことなんて忘れて、後ずさりを続ける。
そんな私を追い詰めるように真鍋さんがゆっくりゆっくりと近づいてくる。
その遅さが不気味で目が離せない。
離したら…ダメな気がする。
「……あ」
後ろを見ずに後ずさりをし続けた結果、無残にもソファに躓いて、そのまま倒れこむ形になってしまった。
すぐに立ち上がろうとしたものの、私の上に真鍋さんがのしかかるように乗ってくる。
