課長と私



ニヤニヤを必死に抑える。


エレベーターにのって、1階のボタンを押す。
閉のボタンを押そうとした、そのとき。


「あっ!待ってくださ~い!」

「あ…」


このふわふわとした声は…


「あー!須藤さんだぁー」

「お…おはようございます、三枝さん…。」

「おはよ~」


女性らしい香りと華奢な体。
きっと男性がほっておかない。


そんな彼女は先輩の隣に住んでいたりする。
それを初めて知ったときは少しだけ居心地が悪かった気がする。

こんな可愛らしい人が近くにいる、それだけでモヤモヤしたものだ。


「成瀬さんのところにお泊りですかー?」

「えっと…はい。」

「いいなぁ…ラブラブですねぇ」


にこにことこちらに笑顔を向ける。


「いや…そんな…」


正直私は三枝さんが苦手だ。
日本の男性が求めるような女性像そのもの。

会話で選ぶ言葉や仕草。

とてもじゃないけど私にはここまで女性らしくはできない。
それがナチュラルにできるこの人が少しだけうらやましい。


「あ…それじゃ、私電車なんで…」

「うん、またお話しようね須藤さんっ」

「はい…。」


私に嫌味なく手をふる彼女に別れを告げて、マンションを出てすぐの電車にかけこむ。