「本当に課長のおごりですか?」
藤崎が居なくなったことを確認し、少しだけ距離をつめて話しかける。
「……楓ちゃん、俺も上司だからね。」
「やったー。」
へへへ、と笑顔を向ける。
大きな手が私の頭に優しく触れる。
「お疲れ。頑張ったね。」
「…はい。良かったです、うまくいって。」
「さっき、大丈夫だった?」
「はい。先輩のおかげで、助かりました…。」
未だに手に感触が少しだけ残っている気がして気持ち悪さは拭えない。
そんな表情をしてしまっていたのか、先輩は私の手の甲を自分のワイシャツでゴシゴシと拭く。
「ふふ…ありがとうございます。」
「笑い事じゃないよ…一歩間違えばセクハラ。あと、藤崎とのことも。」
「えっと…聞いてましたか…?」
「…少しね。」
藤崎が私に告白をしたことは知っているみたい。
ってことは、握手のことも分かってるのか…。
「彼氏がいるから諦めてって強く言えばいいのに。」
「それでも待つって言ってましたよ…。それと、私そんな強く言えるキャラじゃないです。」
「そう…。じゃあ俺も、曖昧な態度とっちゃおうかな…。」
「先輩はシャレにならないんでやめてください。」
それだけは断固反対だ。
私と先輩じゃ話が全く違う。
「俺たちも行こうか、あっちで皆待ってるし。」
「あ、はい。」
自分の持ち物を持って前を向くと、唇に暖かいものが触れた。
リップ音が耳に残る。
「先輩っ……!!」
「お酒…あんまり飲まないようにしてね。楓ちゃん強くないんだから。」
誰にも見つからないような口づけを残し先輩は私に背中を向ける。
熱がこもっていくのが分かる。
きっと今の私の顔は真っ赤なのだろう。
不意打ち過ぎる…
