課長と私



―――……2日後。





プレゼン発表の日は思ったよりも早く来た。
万全の準備をしていたが、どことなく緊張感はある。

この日ばかりは藤崎とのライバル心は捨てて協力体制だ。


「お前、足引っ張んなよ。」

「そんなことしないってば。足引っ張っていい事ある?」

「無いな…」

「頑張ろ…今日。」

「当たり前だ。…お前に言われなくても、そうするつもり。」

「一言余計だからねあんた。」


横にいる藤崎を少しだけ睨んで深呼吸をする。
やっぱり緊張する。

プレゼン発表の進行は全て藤崎に頼んで、私は書類を渡したり、藤崎のサポートを担当することになった。

続々と会社のお偉いさん方が部屋に入ってくる。
その中には見慣れたうちの課長と社長もいる。

何事もなく説明が進んでいき、私たちの案もなかなか好評に思えたその時。
クライアントの男性のペンが机から落ちた。

すかさず私が取りに行く。


「落ちましたよ。」


進行を妨げない程度の声で相手にペンを返そうとした。


「あぁ。悪いね、ありがとう。」


50代後半か、60代前半のその人はうっすら笑いながらペンと一緒に私の手を触る。


こ…これは世間でいう……セクハラだろうか…

ペンを渡すにしては長時間手を触られている。
スッと何度も撫でる。嫌な感覚。正直気持ち悪い。

私がどうしていいか分からないでいると、少しだけ大きな咳払いがこの男性の向こう側から聞こえた。
その咳払いに気づいて、その人はまた説明を聞きに体制を整えた。


良かったぁ…
あのまま触られ続けてたら顔面パンチしそうだった…。

咳払いの犯人、いや、救世主はなんとなく分かってはいた。
いつも、私の危機に1番早く気づいてくれる。


「…ありがとうございます先輩。」


誰にも気づかれないほどの小さな声で言ったつもりなのに、先輩はチラッとこっちを向いた。

その視線にびっくりして目を見開いてしまった。
それを見てクスリと笑う先輩に心臓が大きな音をたてる。