「ご…めんなさい。」
もうこれしかいうことが出来なかった。
全部私が悪い。ああいう人がいるということに最初から気づいていれば良かったんだ。
「…帰るよ。」
「…はい。」
諭すように静かに呟く。
車の中はとても話しかける余裕もないくらい重い空気で、私はひたすら外へ目線を泳がせていた。
いつもならすぐなのに、今日は先輩の家までの距離が遠く感じた。
エレベーターの中も無口な彼。そのままの状況で家に入った。
「………。」
「………。」
玄関に入ったところでピタッと動きが止まる。
いよいよ怒られるのだろうか。
「腕…見せて。」
「え…」
「引っ張られた方…」
「あ…はい…」
酔った勢いもあったが、そこそこ強く引っ張られたせいで痕がくっきり残っている。
その痕を見て、一瞬こわばった表情を見せる。
「もう許さないからね」
「…はい。学習しました。」
「…で、何だっけ。」
「え?」
「誰が下手だって?」
「え……?」
回想を巡らせる。
…あ。
私のことを引っ張っていた彼の言ったセリフ。
分かってはいたが、夜のことについてだろう。聞いていたんだ…
気づいたときには先輩との距離が思ったよりも近く、腰には長い腕がまわされていた。
「俺…下手なんだ?」
「あ…ちがっ…私が言ったんじゃなくて…んんん。」
頭の後ろもしっかりホールドされている。
息を吸う間もなく舌をいれた深いキス。
唇を優しく噛んで、そのあとすぐに吸い付くように唇を合わせる。
くちゅ…という音が耳に届いて、頭がボーっとしてくる。
私を壁に押し付けて、崩れないように股の間に長い脚がおかれる。
もうすでに足の力がなくなってきた。何かの支えがないと落ちてしまいそう。
「はぁ…っあ……んっ……んぅ」
「…ん………満足できてないんでしょ?」
「…っ、そ…それは私が言ったんじゃなくて……あっ」
玄関先で押し倒される。
大きい手が服の中に侵入してきた。
キスだけでくたくたの私の抵抗なんてあって無いようなものだった。
「せんぱ……っ、まっ…て…あっ」
「待たない」
「やぁ…っ……んあ…あぁっ…」
「今日…寝かせないから……」
履いていた靴を脱がせてベッドルームへ直行。
ふわふわのベッドに降ろされてすぐに続きに入る。
「楓ちゃんが満足したって言うまで…ね。」
先輩が分かってないはずがない。
あの言葉は私が言ったんじゃなくて、あの人が勝手に言ってきた言葉だ。
私は下手なんて、満足してないなんて…死んでも言えない。
…というか、ついていくのに必死なのに…
