ガタガタ……っ
夜の11時30分、玄関の方から物音がした。
「…先輩?大丈夫ですか?」
「んー…」
「お酒くさい……酔ってるんですか?」
「…酔ってな…い」
珍しく先輩が酔っている。お酒はめちゃくちゃ強いのに。
大学の時の友達と飲み会だと言っていた。
それにしても顔にはあまり出ないんだなぁ…
「お水、持ってきますね。」
「ん…」
履いていた靴をゆっくりゆっくり脱ぐ。
もう立てないのか、リビングまで這ってきた。
「先輩、ほらお水ですよ。…明日確実に二日酔いですね。」
「………。」
「先輩…?飲まないんですか?」
「楓ちゃんが…飲ませて…」
「え??」
じっとりとした目でこちらを見る。
正気なのかこの人は。
「ど、どうぞ…」
とりあえず口元にコップを持っていく。
「ちがう…」
「何が…ですか。」
「口移し……」
「何言ってんですか。飲んでください。」
「……嫌。」
子供か…
いつもは適度な甘え方をしてくる彼が、今夜は完全に小さい子のようになってしまった。
お酒は怖い…
まさかこんなこと店員さんにはやっていないだろうな…
「飲めるでしょ。」
「…口移し、して…」
「そ、そんな恥ずかしいこと……」
「喉…かわいた……」
うとうとしている彼。
どうしよう…このままほっとくのもアリだけど………