ふわっと彼の香りに包まれて、耳元でシャッター音がした。
唇に暖かい温度が残っている。
「お…これはベストショットだよ。」
「なっ…」
「もう一回撮り直す?」
「……普通に、したい…です」
「口紅、またあとでね…」
何度も何度も短いキスをして体を預けるように抱きしめあった。
「あ…ファンデーションついちゃう…」
「いーよ、もう本番終わってるから…」
「じゃあ…遠慮なく…」
より一層腕に力をいれる。
家にいるみたいだ。
「あー!いちゃいちゃタイムだ!」
「えっ…?」
聞きなれない声に思わずくっついていた体を離す。
出入り口の方には、彼の実家にあいさつに行った以来会っていない弟くんの姿があった。
「お前……」
「いやいや、ノックはしたからね?」
「はぁ……」
深い溜息。
一気に不機嫌そうな表情をする。
私も少しだけ…なんて、言えないけど…
「兄ちゃん、本当に結婚したんだな。」
「…うん。」
「姉さんのときも嬉しかったけど、やっぱ家族が幸せだと、俺も嬉しい。」
「急にどうした…?」
「別に。…伝えておこうと思っただけ。」
「へぇ…」
「あと、姉さんがめちゃくちゃ泣いてた。…いろいろと思うことがあったみたいで。化粧直し超長いから、俺だけ来た!」
百合さん…
あとで話出来たらいいな…
百合さんの一言がなかったら、こんな素敵な式も、ドレスも着れなかった。
感謝しかない。気持ちをちゃんと伝えなきゃ、彼みたいに。
