課長と私



ベールを外した彼が私の顔を見るとクスリと笑った。





「お、収まらなかったです…」





「泣き虫。」





「いろいろ思い出してしまって…」





「ほら…泣かないで。」






両手で涙をすくった。


そのまま肩に手を置き、近づく唇に私もそっと目を閉じた。







終始泣き顔のまま式は終わった。

式に来てくれた全員と集合写真を撮ってそのままお色直し。




「皆に写真消してもらいたい…」




「え?何で…?」




「こんな顔だったんですよ私…一生に一度なのに…」




「じゃあ代わりに俺が写真もらっておくね」




「そ…そうじゃなくてっ……もぉいいです…」





1つため息をついて、涙の痕が無いか再度確認。






「楓ちゃん、そのドレスも綺麗だね。」




「可愛いですよね、星空みたい…」




「あぁ、なるほど。ネクタイピンが星なんだよね。」





そう言って見せてくる。

さすが百合さん。芸が細かい。





「あ、可愛い…似合ってますよ、亮くん。」




「ちょっとバカにしてるでしょ。」




「してませんて!…ペアルックみたいでいいなって思っただけです。」




「そう?…ほら、そろそろ行くよ。今度は泣かないようにね。」




「う…頑張ります…」




自信の無さそうな返事をした私に、前を歩いていた彼が立ち止まってこちらを向いた。


額に暖かい温度を感じる。ドレスに合わせたティアラとピアスが微かに揺れた。






「泣かないおまじない。」




「お…頑張ります。」




「お願いします。」






私はほんのり赤くなりながら披露宴の会場に進んだ。