課長と私



「楓ちゃん、お化粧とれちゃうよ…」




優しく笑う彼に、眉を八の字にしながら一生懸命涙を乾かそうとする私。





「成瀬くん…楓を幸せにしてくれよ。」





お父さんが、少しだけ涙声になっていた。

不愛想だけど、姉妹2人をしっかり育ててくれたお父さん。
お父さんの娘で本当に良かった。






「はい。必ず幸せにしてみせます。」





彼の言葉に1度頷き、私の手を離す。

離された手が、今度は彼の手と繋がれる。



階段を二段上って、神父様に顔を向けた。




誓いの言葉を聞いているうちに、何とか歪んだ顔を戻そうとする。

隣にいる彼が少し笑っているようにも感じた。






「では、指輪の交換を」




神父様の声で我に返る。

ま、まだ涙出そうなのに…



お互いに向き合うと目の前に指輪が差し出された。

病院でのプロポーズ、指輪をもらった日のことを思い出してしまう。
また胸が熱くなる。





「楓ちゃん、左手貸して」




「は、はい…」





ぴったりのサイズ。
手をつないだ時に分かると言っていたけど、今でも不思議だ。こんなにぴったりになるものなのか…

ちなみに彼のサイズはちゃんとお店で測ってもらった。



今度は私から彼へ指輪をはめる番。

大きな手の暖かさに安心したと同時に、また涙がポツリと流れた。






「誓いのキスを。」





神父様の一声で、式がどんどん進められていく。



そういえば、プロポーズの時も泣いてたな私…。

大事な時に私はいつも泣いてしまっている。そういう人生なのかも。