課長と私


「楓、本当に綺麗だよ。」




ふいに微笑まれると、今度は私の涙腺が刺激される。





「こらこら…全くうちの家族は…」




「だってぇ…」





ぱたぱたと手で目をあおぐ。


ダメだ。まだ泣いちゃダメ。





「そろそろお時間です。準備はよろしいでしょうか。」




「あ、はい…よろしくお願いします。」





スタッフさんの声に緩んでいた涙腺も一気に閉まる。


深呼吸を1度して、前を向いた。




扉が開くと、知っている顔がたくさん。

緩奈も秋穂も藤崎も和田さんもいる。
呼べた人数は少なかったけど、安心するメンバーだ。





「新婦様の入場です。」






一歩前に進む。

お母さんのほうを向いて、少しだけかがんだ。


頭の後ろにあるベールを泣きそうになりながらかける。





「楓…幸せになってね。」




「お母さん…ありがと……」





また涙がたまっていく。

今度は流れてしまいそうなほど一気に。





「楓。」




「うん…。」





お母さんと離れて、今度はお父さんの腕に自分の腕を絡ませる。


お父さん、意外と細い…
この何年かで細くなった、のかな…






「楓、本当は…父さんも寂しいよ」






ヴァージンロードを歩きながら小声で話しかける。






「時々…帰ってきなさい。」




「う…ん……っ」




「孫の顔も、ちゃんと見せに来なさい…」




「……ん」






もう止められなかった。

大粒の涙が2つこぼれていく。



そうこうしているうちに、彼の目の前まで来てしまった。