それから間もなくして、私たち二人の関係を同じ部署の人たちに伝えた。
緩奈だけは知っていたから、その他の同僚たちは驚きの表情をしていた。
ただ、藤崎が思ったよりも薄い反応だった。
「楓、やっとだね…本当、良かったね…」
「ちょ…緩奈泣かないでよ……なかなか来られなくてごめんね?穴あけちゃうことになるけど…」
「嬉しいことなんだから、大丈夫!あんたの穴埋めは皆でなんとかする!ね!藤崎!」
「は!?あ…あぁ。それは、そうだけど…」
急に話しかけられた彼はなんだかいつもらしくない。
目がなかなか合わない。
「なぁ…須藤。ちょっと良いか…」
「…うん。」
目くばせで亮くんを見ると、軽めに頷いてくれた。
皆が彼から根掘り葉掘り聞いている間に私たちは給湯室のある部屋まで来た。
久々に来たからか、懐かしい感じがする。
「ほら、おごってやる。」
「ありがと…」
「ん…。」
手渡されたお茶は、体のことを気遣ってか暖かいものだった。
ソファに座り、藤崎からの言葉を待つものの、なかなかひと言が出てこない。
先輩とうまくいっていなかった期間。
私を近くで支えてくれたのは彼だった。
もし、あの時決心が少しでも遅かったら、確実に彼と新しい人生を歩むことになっていたと今では思う。
「課長かよ……って薄々気づいてた。」
「え……うそ。」
「最近になってだけどな。あの、課長が入院したとき。」
「で、ですよね…」
私がめちゃくちゃ取り乱してしまったがために…
「素直には、喜べない。」
「……。」
「だけど、おめでとう。」
「ありがと…ごめん。」
「謝んなよ…」
