課長と私


「連絡先、教えたのダメだった?」


私の言いたいことが分かっていたようで、先輩の方から話が進む。


「あっ…いや……ダメっていうか…」

「ダメじゃないんだ。」

「や…やっぱりダメです。」


勇気を振り絞って、やっと言えた。
この気持ちが一番言いたかった。


「……楓ちゃんでも、束縛するんだね。」


束縛……
これは束縛なんだろうか…

いかん、余裕のない女性だと思われるかもしれない。
やっと言えた言葉だったが後先考えずに行動に移してしまった。


「だって…長坂さん、社内で噂されるほどの美人だし…」

「だから…?」

「……先輩の、気が変わって……そのぉ…」


二股っていうかぁ…なんていうかぁ…
“浮気”という言葉を口に出したくない。


「気は変えるつもりはないんだけど…」


買い物を終え、彼の車に乗り、いつもの道を走って、いつの間にか先輩の家の駐車場についていた。

何も言わず少し買い過ぎた食材の入った買い物袋を持ってくれる。


「本当ですか?」

「気を変えてほしいの?」

「…嫌です。」

「じゃあこの話は終わり。」


家の鍵を取り出す。
鍵をあけて、部屋に入ると「あっ」と思い出したように声を出す先輩。