「何か余計なこと考えてるでしょ。」
「か、考えてません。」
「そ。…じゃあ、行ってくるね。」
「はい。いってらっしゃい。」
「………。」
「……忘れものですか?」
こちらをじーっと見つめる彼に思わず質問してしまった。
「うん。」
「何ですか?お財布?カードケース?携た……」
少し距離を縮めて。
数秒間だけ薄い唇が触れた。
名残惜しそうに離れて、頭を撫でる。
「いってらっしゃいのキス。」
「逆パターンですね。」
「明日は楓ちゃんからね。」
「え、毎日ですか!?」
「寂しいんじゃないの?」
「う、うーん…」
くすりと笑い、カバンを持ち直した。
「行ってくる。」
「…行ってらっしゃい。」
扉が閉まると、少しだけため息が出た。
夜まで我慢だ。
リビングに戻ると着信音がなっているのに気付いた。
「百合さん…?」
慌てて通話ボタンを押す。
「はい、もしもし。」
「あ、楓ちゃん?体調どう?…って言っても昨日の今日だから変わらないかな?」
「体調は変わりないですよ!ありがとうございます。…何かありました?」
「そっかそっか、良かった!式のこと、少し話できたらなって思って。あと、ベビちゃんの洋服とか一緒に見に行ってみないかなぁって。」
「本当ですか?嬉しいです、ぜひぜひ!」
「じゃあ私の予定あとで送るね!亮が仕事行ってる間にでも行こうね~」
「はい!楽しみにしてます!」
彼のいない時間が寂しいと感じる私の気持ちを感じ取ったかのように接してくれた。
式のことも、赤ちゃんのこともフォローしてくれる百合さん。とっても素敵な人だ。
