課長と私


「人の恋愛歴語るのやめてくれない。」

「語るほどのネタもらってないわよ。」


後ろの扉から亮くんが戻って来た。
おでこの赤みはまだひいていない。


「楓ちゃん、風呂入って来なよ。雅人が帰ってくる前に。」

「あ…その、お父さんが話を聞かせてくれって、部屋で待ってます。」

「そう…じゃあ話の後で入ろうか。…具合どう?」

「今のところは大丈夫です。頭痛も、吐き気も無しです。」


ガッツポーズを見せてみた。
安心したように微笑む彼。


「おお…母さん見てよ、我が家の長男がいちゃついてるわよ。」

「あら…。亮にもこんな一面があるのね…母さんにもその笑顔を向けてほしかったわ。」

「うるさいな、さっきから何なんだよ。」

「ふふふ…」


亮くんは私の家のことを温かいなんて言ってたけど…
彼の家も十分すぎるくらい暖かい家族だと思う。


「ほら、お父さん待ってるんだから行きな。」

「ん。…行こう楓ちゃん。」


彼に促されて席を立つ。
部屋を出て廊下を歩いていく。


「あの…おでこ、どうしたんですか…?」


気になって気になって仕方なかったのだ。


「…土下座して……頭を畳に押し付けられた…」

「えっ」

「……怖かった。」

「す、すいません…」

「楓ちゃんは悪くない。…俺の責任。」

「…ありがとう、ございました。」

「うん。」


間もなくしてお父さんの部屋へついた。