課長と私


「内緒よ。」

「内緒?」


口元に人差し指をあてる、かわいらしい。素敵な人。


「それじゃあ楓さんも行きましょうか。…お父さんいるかしら。」

「お父様…」

「緊張しなくていいわ。…あの人は女性に弱いから。」


あきれたように笑うお母さんと由紀さん。
亮くんのお父さんにも早く会いたい気持ちでいっぱいだ。

リビングに移動すると、私の母が用意したご馳走と同じぐらいのご馳走が広がっていた。
食べきれるか心配になるほどのボリューム感。


うわぁ…美味しそう…


「何か手伝うことありますか?」

「あぁ、いいのよ。お客さんは座って座って。」


由紀さんに背中を押されて席につく。


「亮も楓ちゃんの隣座りなさい。」

「…はい。」


先ほどぶりの彼の額には赤い何かの痕が。


「亮くん…おでこが…」

「ん…気にしないで。」

「そう…ですか…」


私のいない間に一体何が。


「はい、ご飯。楓ちゃんは無理しないでいいからね。食べられるだけ食べて。…亮は残したら殺す。」

「……はい。」


こんなにおとなしい亮くんはレアだ。


「お父さーん、ご飯だよー!」


由紀さんが廊下に呼びかける。
少し経ってから静かに部屋に入って来た人。亮くんのお父さん。


「おぉ…久々だな亮。…初めまして、楓さん。話は聞いてるよ。」

「こんばんは…初めまして。」


亮くんのお父さん。
もっとこう…ぴっちり、かっちり…厳しいような表情の人なのかと…

部屋に入って来たのは、にこにこ、ほんわかしたような雰囲気の男性。


「美人な子を連れてきたもんだ。」


はははと笑いながら亮くんの前に座った。